


渋谷マークシティ4階のレストランフロアの中央通路から少し詰まったところに、この「御蔵」はある。銀座(1998年1月号)に続き2店目の展開である。基本的な考え方は銀座と変わらないが、オーナー側からは個室を多く、高級感は出さず品格を出す、重厚感よりは軽やかさを、といったややもすれば相反するとも思える要求が出された。これに対し土、木、和紙など多くの自然素材を用いながらそれを感じさせない空間、そしてより「モダン」であること。さらにその場で展開されるシーンを予感させながら、人の気配を感じさせる空間、といった主題を引き出していった。光壁がその役割の大半を担っている。個室部分は誘い、かつ光間仕切りとして、焼き台を取り巻くカウンター席では平面性を与え、柔らかな光で空間を包み込んでいる。
また、目荒らしされた無垢材の床板は、光に照らされた微妙な陰影をつくり出し、ぬくもりと居心地感を高めている。全体としては、素材感を出しつつも、それ自体が主張しないよう心掛けた。銀座店の流動的で広がりのある大きな一室空間に対し、ここではそれぞれの場が気配によって繋がっていく空間を求めた。言い換えれば部分から全体への思考である。
工事種別 | 内外装 新築 |
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床面積 | 217.0m2(うち厨房64.36m2) |
工期 | 1999年12月15日~2000年3月21日 |
施工協力 | 空調・給排水衛生設備/アール・アイ・ケイ設備 電気設備/栄設備設計 厨房設備/フジマック 照明器具/マックスレイ 音響設備/大阪有線 家具/彩ユニオン |
主な仕上げ材料
ファサード | 女竹スダレ コマ竹組み(竹半商店) |
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床 | 玄関/土間タタキ仕上げ、組み石・庵治石敷き(和泉屋石材) 客席/メープル板張り帯鋸目ウッドワックス仕上げ 座敷席/ジュート麻カーペットボンベイ貼り 個室/畳敷き |
幅木 | アルミアングル15x15 |
壁 | PBt12.5ワラすき入り土壁塗り 一部手漉き和紙張り 光壁/透明ガラス18越前和紙張り(長田製紙所) および鳥の子紙張り(唐長) |
天井 | PBt12.5ワラすき入り土壁塗り 真鍮板貼り磨き仕上げ |
家具 | カウンター・ロングテーブル/トチ無垢材 |
かまど | ベニガラ入りシックイ金ゴテ磨き |