


わたしにとって確かな「もの」として実感できる素材を用い、 伝統的な手法にとらわれず、常に新鮮さを求め、確かで安定した空間づくりを目指し店舗をデザインしてきた。今回の「京の田舎料理 御蔵」も例外ではない。銀座の中心部にほど近い1丁目柳通りに面した石貼りの重厚なテナントビルの地階に立地する「御蔵」は、京都から直送される新鮮な豆腐や京野菜など厳選された食材を用い、コース料理を中心に都会の喧騒から離れ、雰囲気のあるもてなしの空間で京の田舎料理として提供すげべく計画された。手ごろな価格で本当においしい料理を食していただきたいと願うオーナーの熱いメッセージでもある。
地下へのアプローチは狭くて長い階段であったが、退屈さを嫌い階段の途中に待合スペースを設定した。ここには食材を並べた石の水槽が据えられ、格子戸越しに店内がちらちら見え期待感を高めている。 狭いアプローチに対し店内は料理店ということで、個室を並べたてるのではなく、それぞれの場が独自の領域を醸し出しつつバランスを取りながら、いかに流動的で広がりのある大きな一室空間を創り出すかがテーマであった。
客席はかまどのような焼き場を取り囲むカウンター席と囲炉裏のある大型テーブル席、一段上がった板貼りの座敷席、そして隅っこにしつらえられた畳敷きの小さな個室で構成され、それぞれの場が互いに影響されながら、独自に雰囲気を持ちつつ床レベルで変化をつけ流れるような空間を意図している。全体を土壁で塗り込め。、土間部分には由良石を敷き詰め、ムク材のテーブルや手漉き和紙張りのパネル、そして晒し竹など自然の素材を自立あるいは対比させ、反射そして透過するやわらかい光で全体を包み込み緊張感が漂う中にも居心地の良い空間を求めた。いろいろな素材を意図的に使いながらも それを感じさせない雰囲気のある空間を求めた。
工事種別 | 内装のみ 全面改装 |
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床面積 | 190.63m2(うち厨房34.36m2) |
工期 | 1997年8月25日~10月5日 |
施工協力 | 空調・給排水衛生設備/東邦テクノ 電気設備/東京電化装備 厨房設備/ホシザキ京阪 照明器具/マックスレイ 音響設備/キャンシステム 家具/彩ユニオン |
主な仕上げ材料
庇 | 松練り付けフラッシュパネルR加工 銅版-文字葺き |
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サイン | 紅殻シックイ塗り スチールフレームメラミン焼付け塗装(関節照明入り) |
床 | アプローチ階段/枕木(栗材)再利用 土間/木実組みラーチ合板t12由良石ひき石貼りt30 座敷/同下地カラ松坂貼りt24ワトコオイル 個室/琉球畳敷き |
幅木 | アルミアングル15x15 |
壁 | PBt12下地珪藻土塗り(ケーソーライト/ヤブ原) 屏風パネル/手漉き和紙張りレジ横スクリーン/紅殻入りシックイ塗り |
天井 | PBt12下地珪藻土塗り 個室・待合/真竹張り(晒し竹) カウンター席/ファッションリブ材貼り(サカイ) |
家具 | カウンター・テーブル/楓ムク材オビノコ目ワトコオイル |
照明器具 | スタンド/竹製糸巻(骨董)再利用 |